『はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語』

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はやぶさ
はやぶさ
posted with 簡単リンクくん at 2007. 1.16
吉田 武著
幻冬舎 (2006.11)
通常24時間以内に発送します。

「はやぶさまとめニュース」で紹介されているのを見て(そのうち書くといいながら)「あっそういえばここでまだ紹介してない」と思い出した。 ので, 早速感想文を。

私は基本的にノンフィクションというジャンルが嫌いで, この本もご多分に漏れずノンフィクション独特の「臭さ」が鼻につくのだけど, まぁなんとか読めた。 それはこの本の筆者の立ち位置に共感できるものがあったからだ。

前にも書いたことがあるが, プロジェクト(この本の場合では「ミッション」)というのは, その過程で人を育てなくてはならない。 人を壊すプロジェクトは(たとえ目的が達成できたとしても)失敗プロジェクトなのである。 逆に上手く目的が達成できなくても, その過程で人を育てることができたなら「その次」に望みを託すことができる。 個々のプロジェクトは独立して存在するのではなく過去の積み重ねの上に成り立っている。 この本はそういった「現場感覚」を比較的上手く表現できていると思う。

また「技術」というのは「技術」のみ単体で存在することはできない。 「技術」は必ず人に帰属するからだ。 プロジェクトを重ねることによってのみ人は技術を獲得できる。 プロジェクトの積み重ねはいったん途切れてしまえば失われる。 最近「はやぶさ2」に関する議論が盛んだが, プロジェクトを予算名目としてしか認識できない, あるいはプロジェクトの成否を目的達成度でしか見れない JAXA の官僚的なものの考え方をまずどうにかすべきだろう。

宇宙開発というのは膨大な予算と長い時間がかかるまさに「国家百年の計」だ。 地球資源を食い尽くす人類は, いずれ宇宙に出て行かざるを得ない。 日本にとって「はやぶさ」はその最初の1フィートだ。

参考:

そういえば, 以前こんなの書いてました。