「著作権の保護期間延長に反対します」に関するブックマーク
2018年の著作権法改正により著作物等の保護期間が一律70年に延長された。
種類 | 改正前 | 改正後 | |
---|---|---|---|
著作物 | 原則 | 著作者の死後50年 | 著作者の死後70年 |
無名・変名 | 公表後50年 | 公表後70年 | |
団体名義 | 公表後50年 | 公表後70年 | |
映画 | 公表後70年 | 公表後70年 | |
実演 | 実演が行われた後50年 | 実演が行われた後70年 | |
レコード | レコードの発行後50年 | レコードの発行後70年 |
これまで Baldanders.info では「著作権の保護期間延長に反対します」キャンペーンに参加してきた。 残念な結果ではあるが,これ以上の「表現の独占」を食い止めるためにも,これまで掲載した記事や関連するリンクをブックマークとしてまとめておく。
「著作権の保護期間延長に反対します」に関するブックマーク
「新しい葡萄酒1」は独占を望まない
(「著作権と著作権法 — 改訂3版: CC Licenses について」より抜粋)
著作権の起源は「出版特許」にあると言われている。 時の為政者から出版ギルドへ出版特許を「下賜」することにより,書籍流通の安定と統制を確保しようとしたらしい。 つまり著作権のもとになったものは,著作者のためではなく,もちろん読者(ユーザ)のためなんかではなく,ひたすら出版者の特権として生み出されたものなのである。
それから紆余曲折があって現在の著作権に近いかたちに整備されてきた。 現代の著作権の枠組みは1886年にできた「ベルヌ条約」がベースになっている。 かつての出版特許との違いは,著作権が,著作者と出版社,著作者と著作者,出版社と出版社,の間のパワーバランスを図る手段として機能していることである。
ただ,この時点でもまだユーザは創作・出版のプレイヤーではなかった。 というか,割と最近までユーザは著作権システムの埒外であった。 これが数十年前くらいから変わってきた。
変化のひとつは,プログラムコードを「著作物」として含めたことにより著者とユーザの区別が曖昧になり,著作物であるプログラム・コードを巡る「独占 vs 自由」の抗争が本格化してきたこと。 もうひとつは情報の符号化とそのことによる複製コストの劇的低下により既存の出版・流通による独占が意味を失いつつあること,である。 前者は FLOSS(Free/Libre and Open Source Software)というかたちでコンピュータ・ソフトウェア産業に大規模な構造変革をもたらし,発展を加速させている。 後者は現在進行形で,既存の出版・流通チャネルはこの変化に対して必死に抵抗を試みている2。
こうした変化により著作者と出版社(者)とユーザの区別は曖昧になりつつある。 しかし,著作権の枠組みは19世紀から殆ど変わっておらず,一連の「大変化」に適合できてない。
著作者や出版社にとっての著作権システムとは,著作物の「独占」状態を如何にコントロールするかであった。 しかし,ユーザの場合は行動原理が異なる。 それはひとことで言うなら「共有」である。 何故ならユーザはコミュニケーションの手段(メディア)として著作物(=表現)を利用するからだ。
参考図書
- 著作権2.0 ウェブ時代の文化発展をめざして (NTT出版ライブラリー―レゾナント)
- 名和 小太郎 (著)
- NTT出版 2010-06-24
- 単行本(ソフトカバー)
- 4757102852 (ASIN), 9784757102859 (EAN), 4757102852 (ISBN)
- 評価
名著です。今すぐ買うべきです。
- 〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争
- 山田 奨治 (著)
- みすず書房 2007-12-20
- 単行本
- 4622073455 (ASIN), 9784622073451 (EAN), 4622073455 (ISBN)
- 評価
「コピーライト永久独占を目論む大書店主に挑む〈海賊出版者〉ドナルドソンの肖像。法廷闘争を軸に著作権を史的に考察する。」(帯文より)
- 18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)
- 福井健策 (著)
- 筑摩書房 2015-01-10 (Release 2015-01-30)
- Kindle版
- B00SM7G6SI (ASIN)
- 評価
福井健策弁護士による「18歳からの著作権入門」の書籍化。
- 本の未来 (Ascii books)
- 富田 倫生 (著)
- アスキー 1997-02-01
- 単行本
- 4756117074 (ASIN), 9784756117076 (EAN), 4756117074 (ISBN)
- 評価
e-book の未来を予見する試みの書。あるいは本とコンピュータの関係について。青空文庫にも収録されている。
Creative Commons
Creative Commons では知的財産権によるコントロールを意図的に制限し,残りの部分を「コモンズ(共有地)」に置くことによって様々な創造的活動を支援できると考えている。
拙文ながら Creative Commons については以下で紹介している。
Creative Commons に関する参考図書
- オープン化する創造の時代 著作権を拡張するクリエイティブ・コモンズの方法論 (カドカワ・ミニッツブック)
- ドミニク・チェン (著)
- ブックウォーカー 2013-06-25 (Release 2013-06-27)
- Kindle版
- B00DI8TMPU (ASIN)
- 評価
手軽に読める。お薦め。
- フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環
- ドミニク・チェン (著)
- フィルムアート社 2012-05-25
- 単行本
- 4845911744 (ASIN), 9784845911745 (EAN), 4845911744 (ISBN)
- 評価
国内における Free Culture の事例が豊富。取っ掛かりとしてはちょうどよい本。
- FREE CULTURE
- ローレンス・レッシグ (著), 山形浩生 (翻訳), 守岡桜 (翻訳)
- 翔泳社 2004-07-22 (Release 2016-03-28)
- Kindle版
- B01DJ5VE0W (ASIN)
- 評価
Free Culture の原典。白田秀彰さんの「FREE ANNOTATION」も併せてどうぞ。
- クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権
- レッシグ,ローレンス (著), 敬士, 椙山 (著), 圭介, 上村 (著), 紘一郎, 林 (著), 絵美, 若槻 (著), 大洋, 土屋 (著), クリエイティブコモンズジャパン (編集), Lessig,Lawrence (原著)
- NTT出版 2005-03-01
- 単行本
- 475710152X (ASIN), 9784757101524 (EAN), 475710152X (ISBN)
- 評価
残念ながら紙の本は実質的に絶版なんですよねぇ。是非デジタル化を希望します。
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「グーグル・ブック・サーチ,あるいはバベルの図書館 新しいぶどう酒は新しい革袋に」参照。ちなみに「新しい葡萄酒」というのはマタイ伝第9章17節に出てくる言葉で,(旧いユダヤ教に対する)キリスト教を指す。 ↩︎