『日本酒は世界一である』を読む
いやぁ,この手の本を見ると,いかに他人の評論ってのがあてにならないかってのがわかる。 これはもちろん評論者が悪いのではない。 それだけ日本酒というのは複雑なのだ。 そしてそれを飲む側の好みというのも百人百様だということでもある。
例えば広島県では菱正宗,於多福,賀茂鶴が挙がっている。 特に賀茂鶴あたりは全国的にも有名だろうが,私はここの酒をあまり美味いと思って飲んだことがない(美酒鍋は美味かった)。 それよりも名前の挙がってない瑞冠とか旭鳳とか華鳩(貴醸酒が絶品)といったお酒のほうが好みだったりする。
それでも自分がよく飲むお酒の銘柄が好意的に紹介されているのはいい気分である。 この本は基本的に好評しか書かれていない。 帯によると「厳選した全国103の酒造メーカーの極上の日本酒ほか焼酎、地ビール、ワイン、リキュール約200品を一挙紹介!」とあるので,本当に良い(と評価された)お酒しか載っていないのだろう。 そういうことで,まぁこういう本もあっていいのかな,とは思う。
『日本酒は世界一である』は行きつけの店の大将に紹介していただいた。 この本にも載っている山口の蔵元の杜氏さんが持ってきてくださったのだそうだ (どこの蔵かは探してみて。ちなみに私がその店でよく飲むお酒は Flickr でアップしている。最近は食い物と酒瓶の写真ばかりでゴメンペコン)。 とりあえず本の ISBN だけスマホにメモって(こういうときブクログのアプリが便利),おうちに帰ってから Amazon でポチった。 やぁ,良い世の中だ。
たしかに日本酒に対する国際的な評価は高いらしい。 これだけ複雑な手順で,生物学と化学の粋を極め,更に作り手の技術も極めたお酒は(醸造酒では)他に類を見ないと思う。 私は杜氏は本物のハッカーだと思っている(歴史的技術的な「深さ(プロクロニズム)」が全然違う)。 いや,まぁ,最近は杜氏を置かない蔵も増えてきたけどさ。 日本酒は決して「神様の思し召し」に任せたものではないのだ。 この本では著者の主観で「日本酒は世界一」と言っているのだが,実際に世界で日本酒がどう評価されているかの分析があればもっと面白いのに,と思った。
(いや実際,海外の人達は日本酒をほんとうに美味しく飲めているのかね? (美味しい)日本酒は温度管理が難しい(普通酒はそこまでシビアでなくてもいいのだが)。 温度管理をしくじればあっという間に味が変わってしまう。 海外の人がヒネた味の日本酒を飲まされているのなら,ちょっと不幸かもしれない)