PukiWiki を閉鎖します

no extension

2005年2月末日を目処に本サイトの PukiWiki コンテンツを閉鎖します。

現在あちこちに散らばっている私のコンテンツを Baldanders.info ドメイン下に統合しようとしているのですが, その過程で Wiki コンテンツについては閉鎖する予定でした。 ただ今回ちょっと大人の事情がありまして, 閉鎖時期を前倒しすることにしました。 あしからずご了承ください。 まぁ私以外あまり利用されていない感じですのでほとんど影響はないと思いますが。 サイトの移転作業は既に開始しているのですが, 具体的なスケジュールについては後日詳しくお知らせする予定です。 なお, これまで作成したページの中で有用と思われるページについてはスタティックなページに変換し「PukiWiki コンテンツ保存」にて順次公開することにします。

以降からは, Wiki について思うことを少し書いてみたいと思います。

最近は様々な Web アプリケーションが登場していますが, 個人的にもっともお気に入りなのは Wiki だったりします。

Wiki (WikiWikiWeb)は黒板型のコミュニケーション・ツールです。 基本的には誰でも自由にページを作成・編集できてしまうのが特徴です。 Wiki の存在を知って以来, 自分でも導入していろいろ試して遊んでいました。 そこで思ったことは, Wiki は確かにコミュニケーション用途としては非常にコンビニエントなツールですが個人用の道具としては費用対効果の面から少々重い存在である, ということです。 個人用の Wiki としては RandomNote を始めとする軽量ツールも出てきました。 私も RamdomNote/PHP を導入してからは利用の主軸がそちらに移っています。 こうなると PukiWiki のような重量ツールの運用がますます重く感じるようになりました。 これが私をして PukiWiki を閉鎖する理由です。

Wiki という道具を使って最も成功していると思われる事例は Wikipedia でしょう。 Wikipedia については最近ネットで何かと話題を提供しているのでご存知の方も多いかもしれません。

これらの例が示す Wikipedia の問題はおおむね2つあります。 ひとつは(その名前故かもしれませんが) Wikipedia コンテンツに「百科事典」としての権威性が付与されることにより, その権威に対する反発(それも主に既存の「百科事典」の権威側からの反発)があること。 もうひとつは偶然または故意により(一時的にせよ)虚偽の内容が書き込まれた場合, その対象の社会的な名誉・声望を傷つけてしまう可能性があることです。 しかしいずれにしろこれは Wiki や品質の問題ではなく Wikipedia というコミュニティの問題です。

上述した2つの問題のうち前者は別の問題とも繋がっています。 いわゆる「Web 2.0」における「Wisdom of Crowds (集団知)」と既存の専門家との対立構造(実際にドンパチがあるわけではありませんが)です。 「Web 2.0」に代表される新しいネットの構造は既存の専門家から権威性を剥ぎ取ってしまいます。 権威を剥ぎ取られた専門家が一般の人たちからどのように見えるか, あるいは判断されるか, これが問題です。 「専門家の権威失墜」は実はネットだけの問題ではなく既にリアルでも起こっています。 私がよく書く「消費される「専門家」」あるいは「専門家不全症」といった話です。 今起こっていることは権威が人から言論へ移っていく変化のほんの端緒なのかもしれません。

もうひとつの問題はちょっと厄介です。 何らかの間違いで名誉・声望を傷つけられた場合, 普通は損害賠償などを通して名誉の回復が図られていきます。 しかしこの方法は相手が特定できる場合には有効ですが, 特定できない場合はうまくいかないことが多く, そうなるとサービスの運用者に矛先が向いてしまいます(しかも日本ではそれが法制化されています)。 サービスの運用者は「システム改善」の名のもとに自由度を下げるかサービスそのものを閉鎖することでしか対処のしようがありません。 しかしこれは明らかに筋の悪いやり方です。 名誉・声望が傷つけられたなら, 何よりもその名誉をいかにして回復するかを最優先で考えるべきです。 そのための社会的コンセンサスをいかにして形成していくかが問題ですが, できないことではないように思います。

考えてみれば Web というサービスは世界規模の超巨大な黒板の上で繰り広げられるコミュニケーションそのものです。 故に Wiki で起こる問題はそのまま Web の問題として置き換えられるように思います。 私のサイトの Wiki は閉鎖してしまいますが, Wiki そのものについては今後も注目して追いかけていきたいと思います。