クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて
このページでは,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以降 cc-license)について日本の著作権法との関連を交えつつ解説していきたいと思います。
- cc-license は非排他的なライセンス(許可)を与えます
- cc-license は法的拘束力を持つ「契約」です
- cc-license は作品の「使用」を制限しません
- cc-license のバージョン
- cc-license のメタデータ
- 雑多なこと
- 参考文献
- フィードバック
cc-license は非排他的なライセンス(許可)を与えます
cc-license は大雑把に言って「条件(requests)」と「許可(permissions)」で構成されています。 cc-license の条件には以下の4つがあり,これらの条件を組み合わせて使います。
表示 | 作品のクレジットを表示すること | |
---|---|---|
非営利 | 営利目的での利用をしないこと | |
改変禁止 | 元の作品を改変しないこと | |
継承 | 改変した作品について,元の作品と同じ組み合わせの cc-license で公開すること |
(refs
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
ただし,「表示」は必須条件となっており,「改変禁止」と「継承」は条件が衝突するため同時に指定できません。 結局,以下の6つの組み合わせが有効となっています。
表示 | |
表示-非営利 | |
表示-継承 | |
表示-非営利-継承 | |
表示-改変禁止 | |
表示-非営利-改変禁止 |
(refs
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)
これらの条件(の組み合わせ)を守る限り,ライセンスを受けるユーザ(licensee)は以下に示す非排他的(または非独占的)な「利用」が可能です。
- 作品をコピーすること,または作品を同一状態で別の形式に変換(逐語的コピー)すること 〈複製〉
- コピー(デジタル形式など逐語的コピーを含む)した作品を公表すること 〈頒布,上演,演奏,上映,口述,展示,公衆送信(送信可能化を含む)〉
- 作品に含まれる実演・レコード・放送をコピーし,頒布・再放送・公衆送信(送信可能化を含む)すること 〈著作隣接権を許可〉
- 作品を改変すること(ただし改変禁止の条件がない場合) 〈二次的著作物の創作,複製〉
- 改変した作品を公表すること(ただし改変禁止の条件がない場合) 〈二次的著作物の頒布,上演,演奏,上映,口述,展示,公衆送信(送信可能化を含む)〉
「実演家の権利」「レコード製作者の権利」「放送事業者の権利」「有線放送事業者の権利」をまとめて「著作隣接権」と呼びます。 著作隣接権については後ほど解説します。
元の作品を改変したものを「二次的著作物」と言います。 二次的著作物についても後ほど解説します。
以下の「利用」については条件によらず licensee には許可されていません。
- 作品およびそのコピーについて,著作権表示を改変・削除すること
- 作品およびそのコピーについて,ライセンスおよびその条件を変更すること
- 作品の正当な「使用」または許可された「利用」を制限する技術的保護手段を用いること(技術的保護手段については後ほど解説します)
さらに, licensee が cc-license によって定めた条件(営利目的利用,二次的著作物など)を超える利用を行いたい場合は, licensor である著作(権)者から個別に許可を得る必要があります。 (たとえば,自分の作品にcc-licenseを付与しつつロイヤリティを得たい場合は,cc-licenseに「非営利」の条件を付け,営利目的で利用したいユーザ向けには個別に契約を行う,といった方法もあります)
cc-license は法的拘束力を持つ「契約」です
cc-license についてよくある誤解は cc-license は法的拘束力のないガイドラインである
というものですが,実際には cc-license は法的拘束力を持つ「契約」です(したがって licensor である著作(権)者は cc-license によって一度定めた許可を取り消すことはできません)。
cc-license は以下の3つのレイヤで構成されています。
- コモンズ証(Commons Deed)
- cc-license の条件と許可について Human-Readable な形で記述したもの。
- 法的条項(Legal Code)
- cc-license の内容を Lawyer-Readable な形で記述した「利用許諾書」。 法的条項によって cc-license が法的拘束力を持つことを担保する。
- メタデータ(Metadata)
- 作品に関する(著作権・ライセンスを含む)情報を Machine-Readable な形で記述したもの。 記述形式としては RDFa, XMP などがあるが, Web 上では RDFa がよく用いられる。 メタデータは Google などの検索エンジンで parse され,ネット上の数多の作品を利用条件によって検索可能とする。
日本の作品(著作物)の場合 cc-license は日本の著作権法を準拠法とします。 また日本の著作権法はベルヌ条約をはじめとする国際的な取り決めの中で運用されています。 したがって cc-license は
- 世界中で適用されます。
- 作品の著作権の存続期間の間,持続します。
さらにクリエイティブ・コモンズや cc-license は,著作(権)者である licensor から権利を奪いません。 ユーザである licensee に対しても fair use(公正な利用), firstsale doctrine(最初の頒布(取引)で権利が消尽すること),表現の自由等の権利を侵害することはありません。 クリエイティブ・コモンズは作品や権利の管理を行わず,そのための契約を著作(権)者と交わすこともありません(言い方を変えれば作品は著作(権)者自身が管理する必要があります)。
cc-license は作品の「使用」を制限しません
著作権は,著作(権)者が明示的に許可しない限り,作品(著作物)の「利用」を制限できます。 利用として挙げられるものは以下のとおりです。
- 複製(一部または全部,デジタル化を含む),頒布,上演,演奏,上映,口述,展示,公衆送信(送信可能化を含む),譲渡,貸与
- 二次的著作物(後述)の作成・複製・頒布・上演・演奏・上映・口述・展示・公衆送信(送信可能化を含む)・譲渡・貸与
- 編集,データベース化
一方で,例えば書籍を読んだり音楽を聴いたり建築物に住んだりプログラムを実行したり,といった行為は作品(著作物)の「使用」とみなされ制限の範囲外となります。 たとえば,ある作品の海賊版(著作(権)者によって許可されない利用)が出回っている場合(海賊版の出版は著作権に触れますが)海賊版を見たり聞いたりする行為は「使用」なので著作権は関知しません。 あるいは作品の利用や使用の前段階としての「作品へのアクセス」も著作権の範囲外です。
(とはいえ,実際には作品の「使用」と「利用」の境界は曖昧で,時にこれが議論になります。 実は cc-license にはこうした曖昧さによるリスクを「条件」と「許可」を明示的に設定することで回避する狙いもあります。 また「作品へのアクセス」についても特に日本では「輸入権」や「ダウンロードの違法化」といったもので著作権に含め制限しようとする傾向があります)
また作品の利用の一部については「権利の制限」として著作(権)者の許可無く(無断で)行うことができます。 「権利の制限」の対象となる利用については以下のものがあります。
- 私的複製
- 個人のみが対象,企業のような営利目的を持った団体は含まれない
- 複製する者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係のあることが必要(実質的には家族や親しい友人グループ間のみ)
- コピー機のような自動複製機器を公衆の場に置いて利用する場合は私的複製として認められない場合がある
- 技術的保護手段の回避は私的複製として認められない(DVD の暗号化を解除してリッピングするなど)
- 図書館等における複製(例外事項が多く,これが逆に図書館運用の足枷になっている気が...)
- 利用者の求めに応じてその調査研究用に複製物を提供する場合
- 資料の一部(少なくとも半分以下)のみが対象
- 発行後相当期間が経過した雑誌等に掲載された個々の著作物(記事・論文など)は全部複製することが可能
- 営利を目的としないこと
- 図書館資料の保存上必要な場合
- 他の図書館等の求めに応じて入手困難な資料の複製物を提供する場合
- 国立国会図書館では絶版の著作物のデジタル複製と自動公衆送信が可能
- 国立国会図書館法によるインターネット資料の複製
- 利用者の求めに応じてその調査研究用に複製物を提供する場合
- 引用(引用は無断で行えます)
- 引用の対象となる作品が公表されていること
- 公正な慣行に合致していること(「批判」のための引用は公正な慣行です)
- 引用の目的上正当な範囲であること
- 引用部分が識別できること
- 引用されて利用される側の著作物の出所を明記すること
- 自分の作品が主で,引用される部分が従になっていること
- 視聴覚障害者のための複製
- 公表された著作物を視覚障害者向けの点字にして複製することが可能
- 視覚障害者向けの貸し出し用に公表された著作物を録音することが可能
- 放送中の番組に限ってインターネットで字幕を流すことが可能
- 教育目的の複製
- 教科書への掲載
- 学校教育番組の放送
- 教育機関(学校など)で著作物のコピーをする時
- 継続的ではない講習会,個人経営で営利を目的としている塾や予備校などは含まれない
- 複製は授業に用いるためでなくてはならず,複製する人はその授業をする人でなければならない
- 複製の範囲は,授業のために必要と認められる限度の量で枚数は出席する学生の数まで
- 試験問題として複製
- 視覚障害・発達障害等の児童・生徒のために教科書の内容を複製し拡大教科書を作成できる(非営利のみ)
- 営利を目的としない利用
- 上演権・演奏権・上映権・口述権・有線放送権・伝達権・貸与権が対象(映画の著作物は除く)
- 営利を目的とせず,聴衆や観衆などから料金を受けていない場合
- 付随的利用
- 写真の撮影、録音又は録画の方法によつて著作物を創作する場合
- 分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(付随対象著作物)が対象
- 付随対象著作物の複製,翻案が可能で,付随対象著作物を含む作品を著作(権)者の許可に従って利用することが可能
- 著作権者の利益を不当に害する場合は利用できない
- 時事問題に関する論説の転載等
- 政治上の演説などの利用
- 裁判手続き等における複製
- 行政機関情報公開法などによる開示のための利用
- 公開の美術の著作物等の利用
- 美術の著作物等の展示に伴う複製
- 検討の過程における利用
- 技術の開発又は実用化のための試験に用いるための利用
- インターネット・オークション等の商品紹介用画像の掲載のための複製
- プログラムの所有者による複製など
- 保守・修理のための一時的複製
- 送信障害の防止等のための複製(ミラーリング・バックアップ・キャッシング等)
- インターネット情報検索サービスにおける複製
- 情報解析のための複製
- コンピュータにおける著作物利用に伴う複製
- インターネットサービスの準備に伴う記録媒体への記録・翻案
- 複製物の制限により作成された複製物の譲渡
cc-license では作品の「使用」および「権利の制限」として認められている「利用」について制限しません。
(日本の著作権法における「権利の制限」がこれほど複雑かつ分かりにくいのは,日本には fair use(公正な利用)の考え方がないからだと言われています。 fair use と「権利の制限」の最大の違いは, fair use では公の場での議論を経て公正な利用を構築していくという考え方が根底にあるからです。 これは公の場での争いを避け,一方的な「ガイドライン」で事なかれ的に済まそうとする,日本の商慣行と正面から衝突します。 fair use に関する議論は日本でも行われましたが,実質的な成果を上げていないのはこのためだと思われます)
cc-license のバージョン
現在, cc-license として日本で有効なバージョンは以下のとおりです。
- バージョン 1.0 Generic
- バージョン 2.0 Generic
- バージョン 2.1 日本版
- バージョン 2.5 Generic
- バージョン 3.0 Unported
- バージョン 4.0 International
このうち,厳密に日本法を準拠法として明記し,かつ法的に日本に最適化されているバージョンは「バージョン 2.1 日本版」のみです。
表示 | コモンズ証 法的条項 メタデータ | |
---|---|---|
表示-非営利 | コモンズ証 法的条項 メタデータ | |
表示-継承 | コモンズ証 法的条項 メタデータ | |
表示-非営利-継承 | コモンズ証 法的条項 メタデータ | |
表示-改変禁止 | コモンズ証 法的条項 メタデータ | |
表示-非営利-改変禁止 | コモンズ証 法的条項 メタデータ |
ただし,日本版以外のバージョンも日本発の作品であれば日本法を準拠法として解釈されるため通常は問題ありません(国際取引の場合はどの国を準拠法とするかで問題になる場合があります。この場合は more permissions の仕組みを使うなどして準拠法を明示する方法もあります)。
Generic / Unported / International の各バージョンについては,可能であれば最新版(4.0 International)にアップデートすることを検討してみてください。 cc-license は常に議論され改良されています。 (日本語圏では皆無なのが残念ですが)
表示 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ | |
---|---|---|
表示-非営利 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ | |
表示-継承 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ | |
表示-非営利-継承 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ | |
表示-改変禁止 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ | |
表示-非営利-改変禁止 | コモンズ証(日本語) 法的条項 メタデータ |
cc-license のメタデータ
Web 上の作品(または作品を説明する Web ページ)について著作権情報のメタデータを付加するのには RDFa を使うのが一般的です。 RDF は XML などで作品の情報を記述していきますが, RDFa は HTML 文書に情報を埋め込む形になります。 ここでは RDFa を使って Web ページに cc-license の情報を埋め込む方法を説明します。
Web ページ全体に cc-license を設定する場合は HTML の <head>
要素内に <link>
要素を使ってライセンスを指定するのが一番簡単です。
<head> <link rel='cc:license' href='http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/'> </head>
またページのフッタなどに著作権表示をしている場合は,表示部分に RDFa のプロパティを埋め込む方法もあります。 例えば,このページのフッタ部は以下のようになっています。
<div class='copyright' about='cc-license.shtml'> Written and revised by <a href='#me' rel='cc:attributionURL' property='cc:attributionName'>Yasuhiro (Spiegel) <span class='familyName'>Arakawa</span></a> on <span property='dc:dateCopyrighted' datatype='xsd:date'>2014-08-18</span>,<br> Licensed under <a rel='cc:license' href='http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/'><img src='/images/cc/by.s.png' alt='Attribution License' height='12'></a> and <a href='/cc-license.shtml#morePermissions' rel='cc:morePermissions'>more permissions</a> with <a href='/policy.shtml' rel='cc:useGuidelines'>policy</a>. </div>
ひとつひとつ見ていきましょう。
about='cc-license.shtml'
: ライセンスの対象を示します。この場合は cc-license.shtml ページが対象になります。省略するとそのページ全体が対象になります。rel='cc:attributionURL'
:<a>
要素のhref
属性で示される URI が著作(権)者のサイトまたは Profile ページ(へのリンク)であることを示します。property='cc:attributionName'
:<a>
要素で囲まれる部分が著作(権)者の名前であることを示します。property='dc:dateCopyrighted'
:<span>
要素で囲まれる部分が作品の作成日(または年)であることを示します。著作権は作品を作成したときから発生します。また著作権の期限は年単位で計算されます。rel='cc:license'
:<a>
要素のhref
属性で示される URI がライセンス(へのリンク)であることを示します。rel='cc:morePermissions'
:<a>
要素のhref
属性で示される URI が追加許諾(へのリンク)であることを示します。rel='cc:useGuidelines
:<a>
要素のhref
属性で示される URI が付加情報や利用ガイドライン(へのリンク)であることを示します。
「追加許諾」は最初に示した cc-license に対して許可を追加する際に使います。
例えば,ライセンスは「表示-非営利」ですが条件(対価を支払うなど)によっては個別に営利目的の利用を許可する場合は
を使って許諾のページを指示します。
International 版のライセンスを使っている場合は cc:morePermissions
で準拠法を明示する方法もあります。
cc:morePermissions
cc-license には書かれていない事柄(例えば具体的な免責事項や作品の取り扱いに関するお願いなど)がある場合には
を使ってガイドラインのページを指示します。
(余談ですが,何らかの理由で明確なライセンスを設定できない場合は cc:useGuidelines
を使って利用ガイドラインを示す方法もあります)
cc:useGuidelines
や cc:morePermissions
では,ベースになっている cc-license の許可を制限または反故にするような内容は NG です。
cc:useGuidelines
ひとつのページの中に複数の作品がある場合には <div about='foo'></div>
等で囲むことによって個別にライセンスを表示することができます。
たとえば次のように他者の作品を引用・転載している場合
HTML+RDFa の記述は以下のようになります。
<figure about='https://www.flickr.com/photos/steren/2732488224' typeof='dc:StillImage'> <a href="https://www.flickr.com/photos/steren/2732488224" title="Creative Commons BBB by Steren Giannini, on Flickr"><img src="https://farm4.staticflickr.com/3148/2732488224_aedf36e837_z.jpg" width="640" height="360" alt="Creative Commons BBB"></a> <figcaption><a href='https://www.flickr.com/photos/steren/2732488224' property='dc:title'>Creative Commons BBB</a> (licensed under <a href="https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/" rel='cc:license'><img src='/images/cc/by.s.png' alt='Attribution License' height='12'></a> by <a href="https://www.flickr.com/photos/steren/" rel='cc:attributionURL' property='cc:attributionName'>Steren Giannini</a>, <span property='dc:dateCopyrighted' datatype='xsd:date'>2008-08-04</span>)</figcaption> </figure>
<figure about='~'></figure>
で対象を指示して,その子要素で著作権情報を表示しているのがわかると思います。
また,元の作品から何らかの改変を行っている(つまり二次的著作物)場合
HTML+RDFa の記述は以下のようになります。
<figure id='me-too' about='#me-too' typeof='dc:StillImage'> <a href="/images/cc/adaptation.svg" title="Me, too!"><img src="/images/cc/adaptation.svg" width="640" height="360" alt="Me, too!"></a> <figcaption><span property='dc:title'>Me, too!</span> (via <q lang='en'><a href="https://www.flickr.com/photos/steren/2732488224" rel='dc:source' typeof='dc:StillImage'><span property='dc:title'>Creative Commons BBB</span></a></q>, <span about="https://www.flickr.com/photos/steren/2732488224">licensed under <a href="https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/" rel='cc:license'><img src='/images/cc/by.s.png' alt='Attribution License' height='12'></a> by <a href="https://www.flickr.com/photos/steren/" rel='cc:attributionURL' property='cc:attributionName'>Steren Giannini</a>, <span property='dc:dateCopyrighted' datatype='xsd:date'>2008-08-04</span></span>)</figcaption> </figure>
<figure about='~'></figure>
が変わりました。
更にキャプションの著作権表示に rel='dc:source'
があるのがわかりますでしょうか。
これでオリジナルの作品を指示することができます。
オリジナルの作品の著作権表示は後続の <span about='~'></span>
で囲まれている部分です。
(Thanks for a work of Steren Giannini.)
自身の作品について著作権表示をおこなう際に最低限必要なのは「著作(権)者名」と「作成日(または年)」です(著作(権)者名は本名でなくとも構いません)。 これに cc-license を加えた3点が正しく表示されているかどうか注意して下さい。
著作者であれば作品を作成した時点で自動的に権利が付与されますので Copyright ©
は付けなくとも自明です。
ただし何らかの形で権利が譲渡されている(つまり著作者と著作権者が異なっている)場合は表記に注意が必要です。
もちろん(たとえ著作者であっても)権利のない人が勝手にライセンスを設定することはできません。
他者の作品を転載(複製・配布)したり二次的著作物の場合は,原則としてオリジナルの著作権情報を付記します(著作(権)者がこれを求めない場合もあります)。 オリジナル作品が cc-license の場合は
- オリジナル作品の(権利の帰属先としての)著作(権)者名
- オリジナル作品のライセンス表記(追加許諾があればそれも併せて)
- オリジナル作品の免責事項等(もしあれば)
- オリジナル作品を示す URI またはハイパーリンク(もしあれば)
があることを確認して下さい。 ただしハイパーリンク先に最初の3つの表示があればハイパーリンクの明示だけでも OK です。
(© マークは著作権が登録制だった時代の名残です。 現在は(ベルヌ条約に基づき)著作権は自動的に著作者に付与されます。 つまり(期限切れのものを除いて)著作権の存在しない著作物はありません。 したがって,他の登録制の知的財産権である ® や ™ などのマークは有効ですが, © は実質的に意味がありません。
今の時代においてはむしろ「著作権のない」または「著作権を実質的に放棄した」作品に対してマークを付与するほうが有効と思われます。
Creative Commons ではそういった作品用に や といったマークを用意しています。
ちなみに CC0 は Gnu Project によって GPL-Compatible Free Software Licenses
のひとつとして認められています)
RDF/RDFa について興味のある方はRDFa 入門
(またはその中の ccREL
の項目)を参照してみてください。
雑多なこと
cc-license と人格権
日本の著作権法には複製権や頒布権といった「著作財産権」の他に「著作者人格権」があります。 著作財産権は譲渡可能ですが,著作者人格権は譲渡や放棄はできませんし(著作者に対し著作者人格権の不行使を強制することもできません)著作者以外の人が行使することもできません。 著作者人格権は以下の権利で構成されています。
- 公表権
- 氏名表示権
- 同一性保持権
このうちもっとも強力な権利が「同一性保持権」です。 日本では(著作者の意に反しているかどうかに関わらず)作品の改変を著作者によって禁止することができます。 例外はいくつかありますが,このような強い権利は他の国にはありません(同一性保持権自体は他の国でも見られますが,かなり限定的です)。 このため日本の著作権ライセンスの中には, licensor による「同一性保持権」の不行使を明示しているものもあります。
cc-license 日本版では著作者人格権の行使に関しては限定的で。
となっていて,結果的に著作者の名誉・声望を害する形での改変は許可されないことになっています(これ以外の人格権の行使は明示的に「行使しない」(第3条)となっています)。
cc-license 4.0 International では,著作者人格権はライセンスされない,とあります(パブリシティー権・プライバシー権といった人格権類似の権利についてもライセンスしないとあります)。
ただし可能な限り[...]権利を主張しない
ともあります。
cc-license と著作隣接権
日本の著作権法には更に「著作隣接権」が存在します。 「著作隣接権」は以下の権利で構成されています。
- 実演家(俳優・舞踏家・演奏家・歌手など)の権利
- レコード製作者の権利
- 放送事業者の権利
- 有線放送事業者の権利
cc-license 日本版では著作隣接権者についても配慮されています。 先の人格権についても「実演家の人格権」を含めた記述になっています。 また著作隣接権者を licensor に含めるとなると厳密な意味での「著作物」を超える範囲を取り扱うことになります(著作権の存続期間の切れた古典芸能の実演や自然の鳥の声などを録音したレコードなど)。 そこで日本版ではライセンスの目的物を「著作物」だけではなく,それらを含めた「作品」として取り扱い,以下の許可を行っています。
cc-license 4.0 International では Similar Rights
として隣接権を含んだ形で許可を行っています。
二次的著作物の著作権
日本の著作権法では「二次的著作物」を以下のように定義しています。
- 翻訳
- 編曲
- 変形(翻訳・編曲以外で既存の著作物を他の表現形式で表現すること)
- 美術、写真、建築物、地図・図形の著作物で用いられる事が多い
- 写真を絵画にする
- 絵画を彫刻にする
- 美術、写真、建築物、地図・図形の著作物で用いられる事が多い
- 翻案(翻訳,編曲,変形以外のすべての改変をさす)
- 脚色,映画化・漫画化・小説化など
- プログラムのバージョンアップや他言語への移植なども翻案とみなされる
ここでポイントとなるのは,二次的著作物とみなされるのは既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われるに至っていない場合
(アンコウ行灯事件
判決文 より)であるということです。
したがって機械的な変換(点字やローマ字への変換,原曲を1オクターブ下げる,絵画を写真に撮るなど)は二次的著作物とみなされず「複製」になります。
複製と二次的著作物の違いは,複製の場合は複製を行った人には著作権は付与されないですが(当然ですね),二次的著作物の場合は2次創作を行った人とオリジナルの作品の著作(権)者の双方に権利が付与されます。 これを利用者からみると,二次的著作物を利用するためにはオリジナルの著作(権)者と2次創作の著作(権)者,の双方から許可を得る必要があります。
cc-license はサブライセンス(二次的著作物を含む作品の配布者が受領者に再許諾を行うこと)を禁止していますが,ライセンスの条件の範囲内で利用する限りにおいては問題ありません。 (ただし条件を超える利用を行う場合はオリジナルの著作(権)者からも許可を得る必要があります)
cc-license 下の著作物の二次的著作物が cc-license 下でない場合があります(「継承」条件がない場合など)。 この場合でも元の作品の利用許可を妨げるような条件をつけてはいけません。
キャラクタの権利
キャラクタやキャラクタの名前の利用については著作権ではなく商標権(工業デザインの場合は意匠権)で制限されている場合があります。 cc-license は商標権や意匠権についてはライセンスしませんので,個別に許可を得る必要があります。 (キャラクタそのものには著作権はないという説もあります。このため,防衛のためにキャラクタやキャラクタの名前を商標登録することが多いそうです。ちなみに名前や標題に著作権はありません)
実在の人物やその人物の延長上のキャラクタ(「デーモン小暮閣下」など)に対しては「パブリシティ権(publicity rights)」が適用されます。
パブリシティ権は肖像権の一種で,氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利
(ダービースタリオン事件
判決文 より)と定義されています(作品上の架空のキャラクタや無機物やペット等にはパブリシティ権は適用されません)。
cc-licenseでは,パブリシティ権についてもライセンスしません。
パロディについて
海外では,パロディ(parody)・風刺についてfair use(公正な利用)としてある程度認められている国もありますが,日本ではパロディに関する規定そのものがありません。 そのため現状では「引用」か「二次的著作物」かで線引されることになります(パロディはいわゆる「パクり」(一般的には「剽窃」と言います)とはちがいます)。 商業作品の場合は(防衛のために)あらかじめオリジナル作品の著作(権)者から許可を得ていることもあるようですが,そうでない場合は特に悪質なものでない限り「黙認」されているのが現状のようです。 しかし,いったん訴訟になった場合,パロディ作品が「引用」として認められるのはかなり難しいと思います。
2次創作のみを許可したい場合
cc-license ではどの条件の組み合わせでも作品のコピーや配布を制限しません。 これは cc-license を適用した作品がインターネット上に置かれることを前提にしたものです(そもそもインターネットはコピーの連鎖で成り立っているものですし,無理に制限しようとすればユーザ側の fair use まで侵害しかねません)。 しかしインターネットに乗らない作品(例えば紙の書籍, CD や DVD でパッケージされた楽曲や映像)は旧来の流通経路でコントロールする必要があるため cc-license とは馴染まない側面があります。
「コピー・配布は許可できないが2次創作は許可したい」という需要に対応するため, Creative Commons では2次創作のみを許可する「サンプリング・ライセンス(sampling license)」の作成が試みられました。 ただ,この試みはうまくいかなかったようで,現在サンプリング・ライセンスは retire しています。
日本で最近の試みとして「同人マーク・ライセンス」があります。 これは日本の同人活動の商慣行に特化したライセンスで,原著作物のコピーや配布を禁止する代わりに二次的著作物(同人誌のみ許可)の創作と(同人即売会での)配布を許可しています。 「同人マーク・ライセンス」では商用・非商用に関わらず二次的著作物の流通経路を限定しているため,二次的著作物に cc-license を付与することはできません。 あくまでも旧来の流通コントロール下でのみ活動が許可されています。
技術的保護手段の禁止
cc-license 日本版では作品の正当な「使用」または許可された「利用」を制限する技術的保護手段(DVD における CSS(Content Scramble System)など)を用いることを禁止しています。
一方, cc-license 4.0 International では,技術的保護手段の回避を許可するとあります。
(現在の DRM(Digital Rights Management)は技術的保護手段を用いたものからネットワーク監視型へとシフトしつつあります(refs 監視をコントロールする -- Baldanders.info
)。
理由としては,ひとつはユーザの「使用」やライセンスによる「自由な利用」をも制限する過剰な保護であること,もうひとつはそもそも技術的保護手段が原理的に破綻していること,が挙げられます。
破綻してるアーキテクチャを法によって強引にねじ伏せるやり方はあまりスマートとはいえませんね)
ロイヤリティ・フリーと著作権管理団体
cc-license では「ロイヤリティ・フリー」を明記しています。
しかしこの場合,著作権管理団体との関係が問題になってきます。 本家米国では著作権管理団体による管理は独占的ではないため,あまり問題にならなかったようです。
しかし日本など他の国においては必ずしもこのような状況にはなってないため問題になります。 そこで cc-license 3.0 の議論の際に以下のような方針が立てられました。
現在の cc-license におけるロイヤリティに関する条項は,このような議論がベースになっています。
責任の制限と消費者契約法
cc-license には「責任制限」の項目があり,「ライセンス対象資料に関していかなる表明も保証も行わない」ことになっています。
したがって提供される作品が他の権利を侵害していないことを licensor は保証しないことになります(まぁ実質的にも無理だったりするのですが)。
ただし日本の消費者契約法のように事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とする
ことができる場合があり,免責が無効であると判断された場合は licensor は従う必要があります。
日本版では「許諾者に故意又は重大な過失がある場合を除き」という但し書きがついています。
未成年が licensor の場合
日本の民法では未成年者(満20歳未満)が許可を行う場合には法定代理人(親権者など)の同意を得る必要があります。 法定代理人の同意がない場合には許可が取り消されることがあります。 著作(権)者である licensor が明らかに未成年であれば,法定代理人の同意の有無を確認したほうが安全です。 一方,未成年の licensor は法定代理人の同意があることを何らかの形で明示したほうがトラブルが少なくて済みます。
参考文献
参考になる(かもしれない) Web ページ
- バーチャルネット法律娘 真紀奈17歳 (時事的な部分では古い内容もありますが,全体的には今でも十分通用する内容です)
- FAQ:詳細版 - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン (cc-license についてわからないことがある場合は,まずこちらを参照してみてください)
- Creative Commons Lisence 3.0 日本版ドラフト -- Baldanders.info (2009年に cc-license 3.0 の日本版ドラフトが公開されパブリックコメントも募集されました。このドラフトは残念ながら実現しませんでしたが, cc-license を理解する助けになると思います) (creativecommons.jp のブログは permalink がしょっちゅう変わるのだが面倒なことこの上ないので改善していただけないだろうか)
- CC0日本語版のパブリックコメントの開催 - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン (2015年5月に正式に日本語版として公開されました)
- What’s New in 4.0 - Creative Commons (cc-license 4.0 の概要です)
2015年に日本語版のパブリックコメントが募集されました。 - キャラクターの著作権法上の取扱いについて|大島・西村・宮永商標特許事務所 (キャラクタの利用に関して詳しく説明されています)
- スクウェア・エニックスの著作権侵害の可能性はグレー!? 『ハイスコアガール』問題について福井健策弁護士に話をうかがってみた|おたぽる (2014年に,スクウェア・エニックスが出版するマンガ雑誌において, SNK が自社のゲームのキャラクタを無断で利用したとして刑事告発した事件について考察したものです)
- 特集 : 18歳からの著作権入門 - CNET Japan (福井健策弁護士による著作権法講座。全20回。現状に則した実用的な内容で参考になります。お薦めです)
参考図書
- クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権
- ローレンス レッシグ, 椙山 敬士, 上村 圭介, 林 紘一郎, 若槻 絵美, 土屋 大洋
- クリエイティブコモンズジャパン (編集), Lawrence Lessig (原著)
- NTT出版 2005-03
- Book 単行本
- ASIN: 475710152X, EAN: 9784757101524
- 評価
残念ながら紙の本は実質的に絶版なんですよねぇ。是非デジタル化を希望します。
reviewed by Spiegel on 2018-11-13 (powered by amazon-item v0.2.0)
- 著作権2.0 ウェブ時代の文化発展をめざして (NTT出版ライブラリー―レゾナント)
- 名和 小太郎
- エヌティティ出版 2010-06-24
- Book 単行本(ソフトカバー)
- ASIN: 4757102852, EAN: 9784757102859
- 評価
名著です。今すぐ買うべきです。
reviewed by Spiegel on 2018-11-13 (powered by amazon-item v0.2.0)
- デジタル時代の著作権 (ちくま新書)
- 野口祐子
- 筑摩書房 2010-10-05 (Release 2014-04-11)
- eBooks Kindle版
- ASIN: B00JGIN6YE
- 評価
クリエイティブ・コモンズ・ジャパン常務理事による著作です。まずはここから始めましょう。
reviewed by Spiegel on 2014-08-02 (powered by amazon-item 0.2.1)
- フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環
- ドミニク・チェン
- フィルムアート社 2012-05-25
- Book 単行本
- ASIN: 4845911744, EAN: 9784845911745
- 評価
国内における Free Culture の事例が豊富。取っ掛かりとしてはちょうどよい本。
reviewed by Spiegel on 2015-05-07 (powered by amazon-item 0.2.1)
- 18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)
- 福井健策
- 筑摩書房 2015-01-10 (Release 2015-01-30)
- eBooks Kindle版
- ASIN: B00SM7G6SI
- 評価
福井健策弁護士による「18歳からの著作権入門」の書籍化。
reviewed by Spiegel on 2018-11-13 (powered by amazon-item v0.2.0)