提出内容

受付番号 201309160000151956
提出日時 2013年09月16日21時37分

案件番号 060130903
案件名 「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について
所管府省・部局名等 内閣官房内閣情報調査室 電話:03-5253-2111(代表)
意見・情報受付開始日 2013年09月03日
意見・情報受付締切日 2013年09月17日

郵便番号 *****
住所 *****
氏名 荒川靖弘
連絡先電話番号 *****
連絡先メールアドレス *****

提出意見 1 「特定秘密」に指定できる情報の範囲が広範過ぎる

本件法案では,秘密指定の対象となる「特定秘密」の範囲を,i)防衛,ii)外交,iii)外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止,iv)テロ活動防止の4分野とし,別表で項目を挙げている。
しかし,これによって秘密指定できる情報の範囲は広範かつ不明確に過ぎる。
第1号(防衛に関する事項)は,自衛隊法別表第4と同じであり,何ら限定していない。
第2号(外交に関する事項)は,「安全保障」の範囲が無限定に広がるおそれがある。
第3号(外国の利益を図る目的で行われる安全脅威活動の防止に関する事項)は,「外国の利益を図る目的」「我が国及び国民の安全への脅威」「その他の重要な情報」など抽象的で曖昧な文言になっており,範囲が極めて不明確である。
第4号(テロ活動防止に関する事項)は,政府がどのような「テロ活動」を想定するかについて歯止めがないし,政府のある活動がその防止のためのものかどうかも政府の主観的な判断次第であるから,いくらでも範囲が拡大してしまう可能性がある。
これらに,「我が国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要」との限定要件を付するとしても,その文言自体が抽象的である上に,行政機関が自ら判断することになっているので,厳格に運用される保障はない。

2 人的管理はプライバシー侵害である

人的管理は,情報を管理する人の側に注目して,人の監視を強化することによって情報漏えいを防ごうとするものである。
確かに過去の漏えい事件を振り返ると,漏えい者について何らかの特異事情が見受けられないではない。
しかし,現実問題としては,様々なリスク要因があっても情報漏えいしない者がいる一方で,リスク要因がほとんどなかった者が情報漏えいすることが起こることがある。
したがって,リスク情報を集積することにより漏えい事件を未然に防ぐことはかなり難しい。
他方,スパイ活動・テロ活動関係や犯罪・懲役の経歴,情報取扱者としての非違,薬物濫用・影響,精神疾患,信用情報など,他人に知られたくない個人情報が相当含まれており,プライバシー侵害のおそれがある。
本件法案は,行政機関職員等の同意を得た上で,第三者に対する照会等により調査を行うこととしているが,行政機関職員等が上司等から同意を求められた場合に,真に自由な意思に基づいて同意・不同意の判断を行うことは組織の性質から考えて不可能である。

3 罰則が過剰である

本件法案では,故意による情報漏えいだけでなく,過失による情報漏えいも処罰するとしているが,過失犯を処罰対象とすることは,責任主義の原則からして極めて問題である。
既遂の場合だけでなく,未遂の場合,共謀の場合,独立教唆の場合,煽動の場合も処罰対象としており,処罰できる行為の範囲が著しく広い。
また,本件法案では,国会議員,裁判官,情報公開・個人情報保護審査会委員などが故意又は過失により秘密情報を漏えいした場合には懲役5年以下の刑罰を課することにしている。裁判官及び審査会委員は国家公務員法の守秘義務で十分に足りており,このような処罰規定を設ける必要はない。国会議員については国会議員間の自由な討論や政策秘書に調査させることを罰則付で禁止することになり,議会制民主主義が空洞化するおそれがある。
秘密情報を取得する行為態様が,「人を欺き」「人に暴行を加え」「人を脅迫する行為」「財物の窃取」「施設への侵入」「不正アクセス行為」「特定秘密の保有者の管理を害する行為」である場合,行為者は処罰されることになる。
しかし,これらの行為概念はいずれも不明確である。特に「その他の特定秘密の保有者の管理を害する行為」は,それ自体が犯罪でないことを想定しているようであるから,そうだとすれば,処罰範囲は不明確である上に,過剰と言わざるを得ない。