「アリスはふしぎの国で」

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青空文庫の新着情報で大久保ゆうさんの「アリスはふしぎの国で」がリリースされているのを知った。

これはルイス・キャロルさんの「不思議の国のアリス」の大久保ゆうさんによるオリジナル翻訳である。 これに先立ち("Alice's Adventures in Wonderland" の草稿版とも言われる) "ALICE'S ADVENTURES UNDER GROUND" の翻訳である「アリスの地底めぐり」も2年前に青空文庫でリリースされている。

(念のため書いておくが,ルイス・キャロルさんの一連の著作は著作権が失効しているが,その翻訳である上述の作品は当然ながら大久保ゆうさんに権利が帰属する。 大久保ゆうさんは青空文庫に提供している翻訳作品については Free Culture License(厳密には CC license の「表示(BY)」)で公開されている)

で,面白いのはここから。 大久保ゆうさんは aozorablog のなかで,2つの作品を比較した論考を書かれている。

他人の頭の中を覗く機会なんて滅多にあるもんじゃない。 それがルイス・キャロル,大久保ゆう両氏の頭の中を垣間見れるなんてラッキー! たとえば

タイトルは「アリスはふしぎの国で」としました。もはや趣味の問題ですが、前から妙に思っていたのが、Alice in Wonderland はアルファベット順だと〈A〉、つまりいちばんはじめの文字のところにあるのに、『ふしぎの国のアリス』だと五十音で半分よりも後ろにあるじゃないか、ということ。Aから始まるものなので、やっぱり〈あ〉から始まってほしいな、と思ったのです。
それと、このタイトル略形の Alice in Wonderland ってフレーズ、なんだかそのあとに動詞が置けそうな、アリスを主語にしてそのまま文章が続けられそうな気がするな、と前々から感じておりまして。なので「アリスはふしぎの国で」としておくと、そのまま文をつなげていけそうな雰囲気にもなるので、そうしてみました。
地底から不思議へ:ルイス・キャロルの加筆をたどる 第0回 より

てな感じ。 私は文芸センス皆無なので,素直に「ほほう」と感心してしまった。 それからは仕事の合間にこの連載を読みながらニヤニヤしてた(気持ち悪いやつに見えただろうなぁ)。 はっきり言って,このブログ連載は個人的に今年前半の No.1 テキストと断言しよう。

実は随分昔に買った「地下の国のアリス」の翻訳本が手元にある。 翻訳者は「書籍情報社編集部」となっていて,1987年に初版が出ている(私の手元にあるのは1988年第6刷)。 大久保ゆうさんの「アリスの地底めぐり」がリリースされたときは,この手元の本と読み比べて楽しんだりした。

「不思議の国のアリス」は単独でも面白い作品だが,こういう読み方ができるというのもまた楽しい。 みなさんもお楽しみあれ。

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不思議の国のアリス・オリジナル
ルイス・キャロル Lewis Carroll
書籍情報社 2002-12
評価

不思議の国のアリス (角川文庫) 鏡の国のアリス (角川文庫) 不思議の国のアリス (挿絵=ラッカム) 鏡の国のアリス (挿絵=テニエル) 「不思議の国のアリス」の誕生―ルイス・キャロルとその生涯 (「知の再発見」双書)

2002年に出た復刻版らしい。原書(のコピー)と翻訳書の2冊セット。

reviewed by Spiegel on 2015/07/06 (powered by G-Tools)