貧すれば鈍す; 『ニッポンの個人情報』を読む
本日2月18日に個人情報保護法の改正案が出た。 今国会での成立を目指すらしい。 批判のあった「利用目的の変更を事前の同意なしに変更できる(オプトアウトで対応)」とした部分については
ということで,一応回避されたらしい。 他の論点についてはおいおい記事が出てくるだろう。
今日は体調不良で1日臥せってたので『ニッポンの個人情報』を読んでいた。 我ながらなかなかタイムリーだ(笑)
この本は(地方在住者から見て)東京ローカルで行われた「プライバシーフリークカフェ」なるトークイベントの内容を収録したものらしい。 そういうのがあったことは知っていたがメンツがメンツなので完全にスルーしていた(東国は遠いしね)。 このメンツでこんなトークショウを見たがるのってオタクか変態であろう。 まぁでも, Kindle 化されていたので「とりあえず読んでおくかなぁ」くらいで。
実際,あとがきでは真面目なことも書かれているが,基本的には「ネタ本」以上のインパクトはなかった。 個々の著者の方々の仕事には敬意を払うし(やまもといちろうさんは本気で何する人か知らないけど),今回の個人情報保護法改正の議論にも少なからず貢献されているのだろうが,それをこんなトークショウで「ネタばらし」したところで「それで?」くらいの感想しかない。
いやもう,ウンザリなのよ。 著作権法改正にしてもサイバーセキュリティ基本法にしても,今回の個人情報保護法改正にしても。 はっきり言おう。
まともな議論がしたいならリポジトリを GitHub に公開しろ!
そして pull request を募集しろ!
パブコメとか緩いこと言ってるんじゃねぇ!
である。 法律こそ code driven で議論すべきなんじゃないのか。 私たち国民の頭の上で空中戦やってんなよ。
日本は本当に「貧すれば鈍す」(この言葉は本文中に出てくる)なんだなぁ,と改めて思う。 文化的にも経済的にも「黄昏時」のこの国は,もはや自分自身を切り売りするしかない。 そんな思惑が透けて見えるのが今の著作権法であり個人情報保護法である。 そもそも背骨となる「プライバシー権利法」と呼べるものがなにもないあたりに日本のダメさ加減うかがい知れる。
(「プライバシー(権)」に関する議論もろくにないまま「個人情報保護」とかどんだけ本末転倒なんだよ)
日本国にも(それを動かす)政府にも,そして市場にも何も期待しない。 自分の身は自分で守るしかない。 私は「悪法も法」とは思わない。
そんな気持ちを新たにする読後であった。
- つながりっぱなしの日常を生きる: ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの
- ダナ・ボイド 野中モモ
- 草思社 2014-10-09
- 評価
プライバシーについて考えるのならむしろこちらを読むことをお薦めする。
- ニッポンの個人情報 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ
- 鈴木 正朝 高木 浩光 山本 一郎
- 翔泳社 2015-02-19
- 評価
「プライバシーフリーク」によるトークショウを収録。日本の「プライバシー(権)」の現状を垣間見るには面白いかもしれない。