「電子出版権」について今更おさらいする
OpenPGP の解説がひと段落したので,またクリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて
をアップデートした。 いや,記事の前半と後半で整合性がとれなくなりつつあったのでチューニングしてみたのだ。 その過程で著作隣接権について追記したのだが,「そういや電子出版権ってどうなったんだっけ?」と思って調べ出したら止まらなくなった。 以降は,覚え書きとして書いておく。
もともとの「出版権」は著作権法の第3章で定められている。
内容をざっくり言うと「確実に本を出すからうちの出版社で独占的に出させてね」という契約を担保するための権利だ。 この契約を結ぶと出版社は「出版権者」として競合者を purge できる。 だから出版権は著作隣接権ではなく,あくまで著者(厳密には複製権を保持する複製権者)から出版社(者)に付与する権利だ。
出版権者は権利だけでなく義務も追う。 具体的には原稿を受けてから6ヶ月以内に出版し,かつ出版を(慣行に従い)継続しなければならない。 義務を怠った出版権者に対しては出版権を取り消すことができる。
今年の著作権法改正では,出版権の対象を紙の出版だけでなく「公衆送信」にまで拡張した,ということらしい。
つまりどういうことかというと
これまで通り本を出すのに紙じゃなくてもいいってことだよね!
むしろ紙に固執する老害出版社を purge できるよね!
ってことなんじゃないだろうか。 出版権が電子出版に及ぶというのなら電子書籍を出さない出版権者は義務を怠ったことになる(んじゃないのかな)。 ネット上の海賊版は取り締まるけど電子書籍は出さないというのは筋が通らないでしょ。
これって「海賊版対策」とは何の関係もないよね。 しかも(ここが重要!),自己出版(self publishing)する人には何の効力もないよね。
まったくワケガワカラナイヨ。 いままで「電子出版権」でやってた議論ってこういうことだったの? すっかり勘違いしてたよ。
参考ページ
参考図書
- アメリカの電子書籍“ブーム”は今 (カドカワ・ミニッツブック)
- 大原 ケイ
- ブックウォーカー 2014-05-15