著作権の濫用は結局のところ...
PDF 版の作成に合わせて「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて」に「キャラクタの権利」と「パロディについて」と「未成年が licensor の場合」の項目を追加した。 「キャラクタの権利」と「パロディについて」は「二次的著作物の著作権」の節に追記している。
「キャラクタの権利」では「パブリシティ権」について言及している。 どういうわけかパブリシティ権が著作権の一部であると勘違いしている人が多い。 確かにパブリシティ権は財産権に類似した権利だが,肖像権やもっと広くプライバシー権に根ざしたものだ(日本には「プライバシー権」は存在しないけど)。 パブリシティ権について言及するならやはり「ダービースタリオン事件」から引用するのがいいだろう。
これで思い出したのが最近の「パクり」に関する批判である(最近 note でも話題になった,らしい←実はよく知らない)。 「パクり」の問題については昔から色々言われていて,少し前なら「嫌儲」に絡んだ話もあるけど,それは結局 freeride(只乗り)の問題に帰着するように思う。
物事を本当にゼロから積み上げてる人なんて本当はいなくて,実はみんな誰かの成果の上に乗っかって活動している。 だから「他人の成果にフリーライド(只乗り)することは,原則として自由」なのだ。 個々の事例について「パクり」が問題になるとすれば,それはその「パクり」によって(誰が得をしているかではなく)誰が損をしているか,で判断すべきだろう。 「(他人が得するのは)けしからん」というのは,そういう意味で根拠の薄い主張であるといえる。
(ちなみに私は「オープンソースフリーライダー協会」の会員です。って,このドメインまだ生きてたのか!)
もうひとつ「パロディについて」は,実はこれ結構ヤバいよ,という結び方をしている。 日本ではパロディに関する規定がない。 そのため「引用」か「二次的著作物」かで線引するしかなくなる。 で,厳密に考えると,ほとんどの場合は「引用」に該当しないので(あらかじめ許可を得ているのでなければ)みんな NG ってことになってしまう。
この辺のグレイ・ゾーンにツッコんでしまったのが「ハイスコアガール」事件だろう(刑事訴訟してしまったのだから「事件」でいいだろう)。 コレに関して『ハイスコアガール』問題について福井健策弁護士に話をうかがってみた
で面白い考察をしている。
「ゲームの実況」をシェアするってのは日本だけじゃなくて世界的な流れだよね。 そのための API を作ろうって話もあるくらいだし。
で,さらに
ここ重要。 さっきも書いたけど「けしからん」ってのは根拠として薄いんだよね。 経済的な被害を被ったってのならともかく。 それとも JASRAC よろしく「みかじめ料」を受け取り損ねたとかいうことだろうか。 それはそれでどうかと思うけど。
それはそうと,拙文クリエイティブ・コモンズ・ライセンスについて
を yomoyomo さんが紹介してくださって,しかもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスについての日本語で書かれたもっとも適切なウェブ上の解説
とか過分な評価まで頂いてモニタの前で照れまくってる状態でアリます。 どのくらいの方々に読んで頂いてるのかわからないけど,参考になる部分があれば幸い。 ついでに上述のような問題についても少しだけ頭脳を振り分けていただけるとありがたい。
Wikimedia Commons 10周年
これも yomoyomo さんのところから。
実は Wikimedia Commons に対しては1つだけ貢献していて,それは寄付をしているというわけではないんだけど, Flickr を通して私の撮ってる写真がいくつか Wikimedia Commons に登録されているらしい(どの写真家は忘れた。実は Wikipedia に載ってるのもある)。 載せてくださったのは私ではないんだけど,こういう誰かの action を通じて「cc-license って使えるんだ」と実感できるようになった。 日本ではサービス側もユーザ側も「もの」を囲い込もうとするので,サービスを横断した活動ってのが起こりにくい。 そういう意味じゃ「自由のライセンス」なんて日本では無用の長物なのかもしれないね(もちろん皮肉)。
more permissions
更にこれも yomoyomo さんのところから。
258ページもあるですよ。 しかもプロパティを見たら Word で作ってるじゃない。 Word って250ページ強のドキュメントなんて作れるの? パソコンがパンクしそうだけど。 読むのに時間がかかりそうだなぁ。
この「GNU GPL v3 逐条解説書」は cc-license 2.1 日本版の「表示-非営利-改変禁止」でライセンスされている。 しかも追加許諾があって「企業・団体等の内部における利用を目的とした複製及び翻訳については、無償でこれを許諾します」とある。 企業内での複製は「私的複製」にも「非営利の利用」にもならないので,このような追加許諾を行ってるのだろう。 翻訳? 日本語以外に翻訳するってことかな? 英語の資料を当たったほうが早い気もするが。
by-nc-nd の意義というか効用を考える際は2006年の ced さんの記事が参考になる。
こうして考えると今回のドキュメントに対する追加許諾はなかなかいいところを突いてると思うのだ。 何故ならこの手のドキュメントを一番読んで欲しいのは実は営利企業だからだ。
著作権の濫用は結局のところ,自らを縛り上げ,他人をも巻き込み,もろとも心中してしまう行為である。