iPad は「窮屈な箱」か
iPad 買いました。
一応、 前提条件を述べておくと, Apple 製品を買うのはこれが初めて。 Mac も iPod も iPhone も持っていない。 私はどうしてもソフトバンクが嫌いだったので, 3G 版は買わずに Wi-Fi 版を選択。 それも Apple Store でオンラインで注文した。 学生時代にドラクエを並んで買ったことはあるけど, この歳でオモチャを並んで買うなんて阿呆な真似はもう無理。
目的は「リビングパソコン」の代替え手段。 私は既に chumby を持っていてそれなりに重宝しているのだが, そんなに色々できるわけではないしサイズもちみっちゃいので, もうちょっと遊べるものが欲しかった。 言い方を変えるなら chumby でできるような機能は iPad には求めていない。 目覚まし時計とかインターネットラジオとか, 天気予報や気象レーダーを表示したり Google ニュースを表示したり Flickr 上の写真をスライドショウで見せたり... とか。 あと仕事で使うことも考えていない。 用途を限定すれば使える局面もあるのかもしれないが, 私は一応ソフトウェアエンジニアだし, iPad のような機能的に制限の多い機器で仕事ができるとは端から期待していない。
というわけで, 以下使ってみた感想をいくつか書いてみる。 上述のような前提があるので, かなり偏見に満ち満ちた内容になるかもしれないが, あしからずご容赦の程を。
まず筐体。 これは文句なくすばらしい。 ディスプレイのサイズも小さ過ぎず大き過ぎず。 薄いし。 あとね, どこ触っても熱くないの。 iPad の熱設計ってどうなってるの? それともそもそも熱を出さない部品なのかしら。 あえて注文をつけるならもう少し軽かったらうれしかった。 iPad 上で文章を読んでいるとやっぱりちょっと疲れるのよ。 まぁ別売りの Dock は買ってあるので, それを読書台代わりに立てかけて使う手もあるんだけど。 そうそう, あの Dock って縦向きにしか立てかけられないのよね。 横向きにもできればうれしかったのに。 まぁいいんだけど。
内臓アプリケーションではカレンダーがなかなかよい。 何がよいって Google カレンダーと同期できるのがすばらしい。 時間になったらちゃんとアラームがポップアップされるし。
iPod には以前 iTunes にぶち込んだ百数十枚の CD を全部同期させた。 6GB 近くあったかな。 iPad は 32GB バージョンを買ったんだけど, ケチらず 64GB にすればよかったとちょっと後悔した。
Safari はイマイチ。 Windows 版の Safari は使ったことないんだけど, 同じような感じなのかな。 だとしたらしょぼすぎる。 特にブックマークレットの登録の仕方が分からなくて往生した。 つか, 手で入れさせるなよ。 本当に iPad 用の Google Chrome があればいいのに。
私が不器用だからなのかもしれないが, iPad で範囲を選択するのって難しくない? もうちょっと易しくならないかなぁ。 Tumblr で Quote するのがやりにくいのよ。 私の場合, Tumblr をスクラップブック代わりに利用しているところがあるので, Quote がやりにくいのはいただけない。
インストールしたアプリケーションの中で個人的によかったなと思うものを挙げてみる。
- ★★★
-
Star Walk:
iPad をかざした方向の星が見える。 GPS (Wi-Fi 機には GPS 入ってないけど),デジタルコンパス,加速度センサを駆使した究極の星座早見盤。
Documents To Go: オフィススイート・ソフトウェア。 Premium 版ではクラウド上のドキュメントと同期できる。私の場合は SugarSync と Google Docs を同期して使っている。 (参照:iPadでOfficeが使える『Documents To Go』) - ★★
-
i文庫HD:
iPad で青空文庫が読める。『はやぶさ君の冒険日誌』も。
Evernote: いつでもどこでもメモを残せる。便利。
CloudReaders: PDF 文書を読むときにはこっちのほうが扱いやすい。左右にページをめくる感じがよい。
ウィズダム英和・和英辞典: 辞書は必要。
デジタル大辞泉: 辞書は必要。
TwitRocker: Twitter クライアント。有料版買っちゃった。 - ★
-
IM+:
Google Talk など。でもよく考えたらあまり使わなかったり。
SugarSync: ストレージサービス。 2GB までは無料。ただ, iPad 上でアプリケーション単体を使うことは少ないかな。
逆に最悪にダメダメだったのは「ビューン」。
というので早速試してみたのだが, サービス開始早々にダウンし, 現在もサービス停止中らしい。 思うのだが, 「○○新聞を読む」という行為は単なるブランドの消費に過ぎないよね。 リテラシーとか関係ない。 Google news 登場以降においては, そのようなブランド消費は(少なくともネット上では)崩壊している。 つまり, まず記事があって, その記事に付属するさまざまなプロパティ(記者名とか記事のカテゴリとか)の中のひとつに出版社や新聞・雑誌名があるに過ぎない。 現時点の「ビューン」は単にコンビニの雑誌棚を再現しているだけ。 せっかく31誌も集めてるのに検索窓のひとつもついてないようなサービスがあるかよ! と思ってしまう。 サービス再開後はぜひとも改善していただきたい。 そうでなけりゃ無料期間中に削除だ。
総じて iPad のソフトウェア設計は古臭い感じがする。 10年前に H/PC で遊んでたころの延長線上に iPad があるように見える。 iTunes がないとアクティベーションすらできないってのが iPad の古臭さを象徴している。 いまどきの端末なら母艦はクラウドであるべきだろう。 今の iPad はそれ自体が箱で, 中にいろんな箱が窮屈に詰め込まれていて, その箱の中の景色を覗き込んで楽しんでるだけのように見える。
でもそれは, これから出てくるアプリケーション次第かもしれない。 Documents To Go のような, 「箱」ではなく「(広大なクラウドを覗く)窓」たるアプリケーションも登場してくるだろう (Apple が横槍を入れなければ,であるが)。 そういった意味では (かつて iPhone がスマートフォンのシーンを変えたように) iPad はネット端末のシーンを変えるきっかけとなる製品であるとはいえる。
まぁ, 本格的なクラウド端末が登場するまではせいぜい iPad で楽しく遊ぶことにしよう。
参考: