コンテンツ未満
遅まきながら Tumblr を使い始めた。 何で今更 Tumblr なのかという話は Vox の記事を読んでもらうとして, ここではもう少し踏み込んで書いてみたい。 といっても使い始めてから間もないので(チャットとか使い方よく分からんし)考えが練れていない部分もあるが, まぁ first impression ということで。
ここでは何度も書いているが, 道具というのは作り手のものではなく利用者のもので, 作り手の意図を超えて利用者が面白い使い方を編み出すというのはよくある話だ。 しかし, 私のごく狭い巡回範囲内を見る限り Tumblr は「スクラップブック」的な使われ方をされることが多いようだ。 私も Tumblr についてはスクラップブック的な使い方が一番しっくりくる。
スクラップブックには完成形というものがない。 気になる記事(スクラップ)を延々と収集し(ときには自分の考えも添えて)貼り付けていく。 ブックマークも延々と URI を収集していくが, ブックマークが集めるのはあくまでもインデクスである点が決定的に異なる (もっとも日本の某ソーシャルブックマーク・サービスなんかは人気(または悪評)投票ツールと化してるけど)。 Tumblr でそういう使い方ができるのは Dashboard 機能およびスマートな Bookmarklet に依るところが大きいようだ。
Dashboard の面白さは, そこが(Friends で繋がっている人同士にとっては)公開作業場になっているところだと思う。 自分の「切り抜き」作業を晒し, また他人の「切り抜き」作業を参照し, その作業を取り込むこともできる。 つまり Dashboard が実現しているのはユーザ同士の「行為のマッシュアップ」なのである。 「切り抜き」作業自体はごく個人的な行為であるにもかかわらず, 行為同士をマッシュアップすることで「意図せざる結果」(私は創発なんて言葉は使いたくない)を誘発しやすくなる。 これはいわゆる「コラボレーション」とも違うし Web 2.0 初期で言われている(コンテンツの)マッシュアップとも違うと思う。 Dashboard が見せているものはあくまでコンテンツ未満の作りかけのスクラップブックなのだから。
「行為のマッシュアップ」が成立するためには前提として2つの条件が必要だ。 すなわち
- コンテンツがコンテナから独立しガジェットに分解可能である
- ユーザの行為・行動が(一定の範囲内で)公開されていること
である。 前者は初期の Web 2.0 の動きの中で定着しつつある (日本ではマーケティング的な思惑が強すぎて違う方向に行っちゃってる気がするが)。 後者はここ2,3年くらいの動きのような気がする。 はしりは Flickr などの公開型 SNS だろう。 Flickr は物置としても使えるが, 一方で Exif 情報や GeoTagging (経緯度タグ)といった行為・行動に関する情報を共有することもできる。 これを更に推し進めたのが Twitter や Tumblr といった最近のサービスだろう。 しかし, 自分の行為・行動を(一部とはいえ)晒すのは心理的な抵抗があるのも確かで, 当面は利用者を選ぶサービスになるかもしれない。
問題もある。 この記事でも指摘されてるけど, Tumblr 上の「行為」には著作権法上のリスクがある。 ローカルにおける個人的行為なら問題ないことでも公開すれば話が変わってくる。 同じ「コンテンツ未満」のスクラップの集積であってもだ。 この辺は CCPL と絡めて語りたいところだけど, 話がズレまくるのでこれ以上は止めておく(笑)
もうひとつ問題がある。 「オープンソースインテリジェンス」というやつだ。 これは (『セキュリティはなぜやぶられたのか』でも登場するけど) 主に国家の諜報機関が使う手法で, 公開情報から必要な情報を収集し分析する手法だが, コンテンツや行為のマッシュアップが一般化してくれば「オープンソースインテリジェンス」もやりやすくなる(諜報機関でなくてもある程度できるようになる)。
こういった問題を「監視」というくくりで論じるのは適当でないと思うのだけど(ついでに言うと「創発」というのも適当でないと思う), 「オープンソースインテリジェンス」という文脈で考えるのなら分かりやすい。
こうした法的あるいはセキュリティ上のリスクとどう折り合ってくかというのが今後の課題だろう。 今回はこれまで。
(追記 7/9)
またポカミスしてしまった。 「行為のマッシュアップ」を最も端的に実装してるのは Wiki じゃん。 そこから CCPL 2.5 の話にもって行こうかなぁ, と思いつつ書いてる頃にはすっかり忘れてた。
この辺の話は色々書きたいのだが全然まとまらない。 そのうち書きます。