時刻系の話: 閏秒ができるまで - 序章
来年2006年になる直前に閏秒が挿入されます。 閏秒が挿入されるのは1999年の直前に挿入されたのが最後で, 実に7年ぶりということになります。 (日本時間では2006年の午前9時直前なので, お正月最初の天文イベントということになるでしょうか)
閏秒はどうやって決められているのでしょう。 閏秒は天文学における「時刻系」の長い歴史の成果です。 これから数回にわたって(私自身の復習も兼ねて)天文学における時刻系について簡単に解説してみたいと思います。
まず天文学における「時刻系」について簡単に紹介しておきましょう。 現代の天文学における時刻系は大きく分けて3つあります。
- 恒星時系
- 地球の自転運動に基づいて定まる時刻系
- 力学時系
- 天体力学の計算のために定められた時刻系
- 原子時系
- 標準とされる原子時計によって定められる時刻系
この3つの時刻系はお互いに独立であり, 原理的には換算できません(厳密にはちょっと違いますが,その話はいずれ)。 よく言われる世界時(世界時系)は恒星時系の一種です。 また協定世界時は原子時系の一種です。 力学時系には地球上からの観測で用いる地球力学時と太陽系天体の運動理論を扱うための太陽系力学時の2種類があります。 地球力学時の1秒は国際原子時(原子時系)の1秒と同じなので, その点では原子時系の一種とみなせなくもないですが, 相対論的な要素があるため両者は区別されます(その話もいずれ)。
閏秒は恒星時系と原子時系のギャップから生じます。 また恒星時系は天文観測によってのみ知ることができるため(厳密には)予測ができません。 したがって次に閏秒が挿入されるのがいつなのか天文学者にも分からないわけです。 天文観測には力学時が用いられます。
では次回からそれぞれの時刻系について更に詳しくみていきましょう。
目次:
参考文献:
このシリーズで参照している文献を紹介します。 ここではできるだけ計算式を用いないようにしていますが, それでは物足りないという方は参考になると思います。
天文年鑑 2006年版posted with 簡単リンクくん at 2005.12.18天文年鑑編集委員会編
誠文堂新光社 (2005.11)
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