惑星と小惑星
(この記事は「もっと辺境から戯れ言」に投稿した記事からの転載です)
最初のマスコミ報道を見て「いつから NASA はそんなに偉くなったんだ?」と不思議に思ってましたが, NASA の公式発表を見る限りでは大分ニュアンスが異なるようです。 やはりマスコミ報道は当てになりませんね。
海王星以遠からオールト雲までの空間を巡る太陽系天体は一般に「エッジワース・カイパーベルト天体 (EKBO)」と呼ばれています。 冥王星もカイパーベルト天体です。 「セドナ」はそれよりも遠いオールト雲にある天体のようです。 (追記 3/18: 現在の天文学上の知見ではオールト雲は「セドナ」の軌道よりも更に遠方にあることになっていますが, 「Sedna (2003 VB12)」では「セドナ」の存在がオールト雲が実はもっと近傍にまで広がっている証拠ではないかと主張しています)
カイパーベルト天体の捜索はここ数年盛り上がっていて冥王星より大きなものもあるのではないかとも言われています。 これらの現状を踏まえて「冥王星は惑星ではないのではないか」とか「巨大なカイパーベルト天体は惑星か小惑星か」と言った議論が繰り返し行われているのですが, 仮に冥王星より大きな太陽系天体が見つかったとしても「惑星」と呼ばれる可能性は低いと思います。
日本語だと分かりにくいのですが, 「小惑星」は英語では「Minor Planets」と呼ばれています。 これは太陽系の主要惑星(Major Planets)と対になる名前です。 小さいから小惑星ではないのです。 NASA の発表の「Planet-Like」という言葉はせいぜい「惑星級」くらいの軽いニュアンスではないでしょうか。
ある太陽系天体が Major Planet と呼ばれるためには天文学以外のあらゆる分野でそれと認知される必要があります。 太陽系の九つの惑星が Major Planets と呼ばれるのは物理的なスペック以上に歴史的な経緯が大きく影響しています。 しかし今回の騒ぎで「セドナ」が Major Planets と認知されてしまったら本当に第10惑星が誕生してしまうかもしれませんね。
参考:
- 「第十惑星」セドナ(仮)の発見者は、惑星と考えていない
- 第十惑星セドナ(仮)の伝説
- 冥王星の3倍かなた、太陽系最遠の天体が発見された
- 太陽系最遠の天体 2003 VB12 の発見(国立天文台・天文ニュース,2004年)
- 冥王星の分類について、国際天文学連合が態度表明(国立天文台・天文ニュース,1999年)
- 「せち日記」 2002年10月14日の記事 (宣伝)