天文学と光害

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(この記事は「もっと辺境から戯れ言」に投稿した記事です)

私の感じでは光害の問題は 1980年代あたりから特に問題視されてきたように思います。 しかし当時は光害自体が世論を呼ぶ状態ではありませんでした。 逆に1980年代後半から脹れ上がるバブル景気とともに日本国各地における「ライトアップ運動」が非常に盛んになっていったのを憶えています。

日本で光害が問題視されるようになってきたのは, ようやく1990年代の終わり頃です。 それも天文学等の学術領域が受ける被害としてではなく, 無節操な夜間照明による野生動物の生態系への影響すなわち「環境問題」としてクローズアップされてきています。

天文学にとって光害の何が問題かというと, 夜間照明が空に向けられる「ライトアップ」の問題です。 従ってこれに対する解決策は照明による光を空に漏らさないようにすることです。 (街灯を含め)既にそのような照明器具は市場に出まわっています。 光を空に漏らさないということは, それだけエネルギー効率の良い照明であるとも言えます。

もちろん天文観測施設のある地域では条例や付近住民との取り決め等で光害を減らす努力が行われています。 しかし狭い日本列島ではもはや光害の影響を全く受けない場所など「ない」といっても過言ではないと思います。 たとえ近所の明かりを落としても, 何百キロ先の都会の明かりが夜空を照らしていたのでは何にもなりません。

近年では目に見える「光」以外にも電波による光害も問題視されるようになってきました。 一応国際協定で電波天文学用にリザーブされている電波領域というのはあるのですが, それを破る人(?)がいるということや, 商業サイドからの圧力により観測用の電波領域を確保するのが難しくなりつつあります。

電波天文観測の対象となる電波は非常に微弱なものです。 例えば今あなたが持っているケータイを月に置き, それを電波望遠鏡で受信してしまったら「針が飛ぶほどの大音量」になってしまいます。 電波天文観測というのはそれほどデリケートなものなのです。

光および電波による光害は今後も続くでしょう。 でも, ここに書いたようなことも頭の隅に入れていただけると嬉しいです