私的録音録画小委員会中間整理に関する意見 2007年11月11日 荒川靖弘 1. 個人/団体の別: 個人 2. 氏名: 荒川 靖弘 3. 住所: (省略) 4. 連絡先: (省略) 5. 該当ページおよび項目名: 以下小見出しに表記。全4件 6. 意見: 5に準ずる 私が意見を述べるのは、以下の4件です。 (1) 103ページの「第30条の適用範囲から除外することが適当と考えられる利 用形態」の項目について (2) 104ページの「i 第30条の適用範囲からの除外」項目について (3) 105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」項目につ いて (4) 105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目ア について (1) 103ページの「第30条の適用範囲から除外することが適当と考えられる利 用形態」の項目について この項目について私は反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。 ダウンロード違法化の議論には前提として違法にアップロードされたコンテン ツが存在するわけですが,これは現行法の送信可能化権の行使により十分規制 することができます。以下に述べるように,ダウンロードの違法化は,それに よって享受できるベネフィットよりもリスクのほうが大きく,後述するように, 日本における IT/ICT 技術の発展や権利者による自由な表現活動に負の影響を 与えるものです。 (2) 104ページの「i 第30条の適用範囲からの除外」項目について この項目について私は反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。 注釈において 「なお、視聴のみを目的とするストリーミング配信サービス(例 投稿動画視 聴サービス)については、一般にダウンロードを伴わないので検討の対象外 である。」 とありますが,現在のインターネット技術においてはストリーミングとダウン ロードは明確に区別されません。また配信サービスを利用する利用者において も,ストリーミング配信サービスで一時的に蓄積されるデータをファイルとし て取り出すことは一般的な操作で可能であり,難しいことではありません。 このような実態で両者を法律的に違うものとして扱うことは,実際の運用にお いて極めて大きな「解釈の余地」を残すことになり,将来におけるインターネ ット上のサービスにおける技術上の選択の幅を狭めることになります。これは 日本における IT/ICT の発展に負の影響を与えます。 (3) 105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」項目につ いて この項目について私は反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。 一般の利用者は,ダウンロードしたコンテンツについて,違法性の有無に関わ らず,弁護士と称する人が訴訟すると脅してきても抵抗できるほどの法的知識 はありません。このように人の不安感を煽って「和解金」を騙し取る手口は 「振り込め詐欺」などに見られる典型的な詐欺の手口ですが,ダウンロードの 違法化は「人の不安感」を更に煽る可能性があり,結果的に詐欺に遭うリスク を引き上げてしまいます。 (4) 105ページの「ii 第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目ア について この項目について私は反対の意見を提出いたします。理由は下記の通りです。 項目アにおいて 「利用者が明確に違法サイトと適法サイトを識別できるよう、適法サイトに 関する情報の提供方法について運用上の工夫が必要と考えられる」 とあり,実際に日本レコード協会がいわゆる「適法マーク」の運用を開始しよ うとしているようですが,これは利用者に対して「適法マーク」のないサイト は違法であるとの印象を与えかねません。権利者の中には個人運用でコンテン ツを配信しておられる人もいます。このような方々のサイトは「適法マーク」 から外れる可能性もあり,結果的に「適法マーク」はそのような権利者の活動 を阻害する要因になってしまいます。 逆に「適法マーク」を付けたサイトであっても手続き上の問題で,例えば盗作 のような,違法コンテンツを配信してしまうことはあり得ることです。もしそ のような事態になった場合,「適法マーク」の信頼性を大きく損なうことにな ります。 マークによる格付けとしては日本情報処理開発協会が運用する「プライバシー マーク(Pマーク)」がありますが,Pマークの認定を受けた大日本印刷が大規 模な個人情報漏洩事故を起こし,同協会から処分を受けた件は耳に新しいとこ ろです。このような適法・違法の識別をマーク等によって運用する方法は維持 が難しく,いったん事故が起きればその影響はマークの認定を受ける全ての企 業・サイトに影響する可能性があります。 以上